都内某所居酒屋にて、作・演出の緑川憲仁と主演の片山洋介に

『レグルスのガラスの翼』について、気になるところを聞いてみました。

――今の心境を教えてください。

緑川:

この1ヶ月は、ダンスから始まったのが初めてだったから、僕も慣れてないし、役者も慣れてないから、チームではなく個のまま慣れない難しいダンスをこなさなければならなかった。これからシーン稽古が始まるところだから、オマケ付きで公演稽古が始まったって感じじゃないかな。
片山: 多分そう。
緑川: 今からまだ二ヶ月だから。いつもは二ヶ月前から稽古だからね。
片山: 早く絡みたいなっていうのが正直なところ。ダンスは(振付の)次朗さん対自分、次朗さん対誰かって感じになっちゃうじゃない。マンツーマンっていうか。しょうがないんだけど。
緑川: この間初めて台詞喋ったじゃない。ま、群唱(※1)だけど。
片山: あ、稽古だって思った。
緑川: まだ全員揃ってないけど、全員揃ったら嬉しいだろうな。昨日は全員揃ってないけど、ウアって感じだったもんね。前回22人で、今回は15人。でも、前回より少ないって感じはしないねぇ。

(※1演劇の表現手法のひとつ。大勢で同時に同じセリフをしゃべる。)

――それぞれの客演さんの印象ってどんな感じですか?

緑川: 絶妙にバラバラだね。違う業種の人たちが集まったって感じがする。
〈小島啓寿さん(カムカムミニキーナ)について〉
片山: 小島さんは適当さ加減の中にあるプロ意識がすごく素敵。
緑川: 僕がこれからやっていきたい稽古の空気を作ってくれる人だなって思う。
〈扇田森也さん(mrs.fictions)について>
片山: 同じ動物だっ!て思った。居方が。感覚人間かなって。
緑川: 皆がイケメン(同じ“せんださん”である千田剛士と区別して、“イケメンののせんださん”と呼ばれている)って言うからかもしれないけど、なんか自分の中で敵意があることは自覚してる。きょとんとしているからなのか、イケメンだからなのか……。
〈阿由葉さんについて〉
緑川: 幅広い世代のキャストの若い方を担ってくれている。いいね。
片山: もうね。稽古場に入ってくる時のオーラが違う。ピッチピチ。今まで大学3年生っていなかったからね。
〈白鳥光治さんについて〉
緑川: なかなか出会えないキャラだね。オーディションで会うべくして会ったなって。
片山: もやしっ子のようなタフに見えない外見だけど、すんごく生命力強い感じ。
緑川: 彼は、根拠なしに大丈夫な感じがしちゃう人ね。
〈三上真依さんについて〉
緑川: 真依さんも若いよね。すごく。
片山: 芸能界オーラがある。こっから堅さをどんだけ脱がせるか。
緑川: 役が役だから、脱ぐよぉ。
〈東所美希さん(アイ♥ドリングストップ花歌マジックトラベラー)について〉
片山: キュートな感じ。チャキチャキしてるんだけど…。
緑川: 止まって喋っている時は男勝りな感じなんだけど、動くと美しい。踊りは一番好き。
〈川上小百合さんについて〉
緑川: ついに喋る。
片山: 喋らせてあげてください。あのルックスで、近寄りがたいオーラがないからいいね。
緑川: 僕はね、小百合さんに言いたいダメ出しがあるの。早く言いたい。笑。
〈木浪香織さんについて〉
緑川: 木浪さんはね……。
片山: 軽い!!
緑川: え、軽いの?
片山: うん、体重がね。
緑川: あ、そっちか。木浪さんは目だね。目とおでこに引き込まれる。忘れない。
片山: あの目は覚えるね。役者って、感情が顔に現れる人と、目に現れる人がいるんだなって、木浪さん見て思った。
――今回はダンスが凄いことになってますね。
片山: ダンスって感じじゃないからね。群表現っていうか。ミュージカルでもないし。ダンスって言うと語弊がある。
緑川: 何か別の言葉作らなきゃね。今、僕らがダンスって言っちゃってるところは、2時間弱の体を駆使した群表現の中のクライマックスシーン。表現してる手段が今までと変わってるわけではない。
――見る側からすると、だいぶ変わってる印象を受けますが。
片山: うーん。集大成じゃないけど、やりたかったことが形になってきた感じ。あそこまでハイレベルなダンスをしつつ、間に芝居がありつつ、ダンス中にストーリーがガーッって展開していくのは、今までやらなかったしね。
例えば、誰かが誰かに会うシーンとか。ワンシーンを切り取って、ダンスをやってはいたけど。
緑川: 僕の中ではイメージは大河ドラマのオープニング。ビジュアルの雰囲気で、その主人公がこれから展開する物語をお客さんに自由に想像してもらう。
日常の世界からお客さんを高速エレベーターでとっととお芝居の世界へ引き込む二分半。
片山: 大河もそうだよね。でもね、僕はハリー・ポッターのイメージが離れないんですけど。
――今回、そのハリーポッターやロード・オブ・ザ・リングを彷彿とさせる古典ファンタジー的なモチーフを選んだのは何故?
緑川: 人間の日常の欲だとか、とるにならない葛藤だとか、そういう小ささと真逆にある、大きなもの。そこに包まれる、絶対的なものの中で、人間がちまちま、ちまちま葛藤をしていく、その対比なのかなぁって。最終的には僕らはこんな大きなものに包まれているよっていう安心感を感じて欲しいのかな。
片山: リアルじゃない世界の方が、お客さんが想像しやすいよね。その世界を知らないもん。
緑川: あとはね、フランスに行ったからかなぁ。確実に影響は受けているね。
水の中にどぼーんと入れられたら、周りは全部水だらけじゃない。今まで生きてきたことと、まるで違うわけで。10日間だけとはいえ、自分がそういう環境にもってかれて。お芝居の中でも、たった二時間弱だけど、お客さんにどぼーんと三十分前とは全く違う空気のあるところに浸って欲しい。今までは中途半端に日常をひきずっていたと思うけど、それがなくなる。そこがイメチェンって皆が言うところなのかなって。
――今までの稽古への臨み方と、今回は違いますか?
片山: 俺全然違うよ。それは俺の気のせいかもしれないけど、違う目で見られているのもわかるし。主役をやらしてもらうからには、周りに敏感じゃないと駄目だなって。
緑川: でも、前回も見えてたよね。
片山: それが今回は枠が広がったって感じなんだよね。前回は力む感じだったけど。
エーデルはこう!くるみはこう!って。
こうがこう!なった感じ。
   
こう こう! 一同:笑
緑川: 阿修羅になった気分?
片山: えっ?!
緑川: 役者たちが群表現で、自分のイメージと近いものになったときに、僕は阿修羅になった気分になる。「おめーらみんな俺だ〜」って。笑。
片山: あ〜なるほどね。
作られる側にいるから、稽古がすごく面白い。言い方違うかもしれないけど、なんか高みから見ている感じ。
長いこと、脇役として芝居を作ってきたから見えるのかなって思う。
――満を持してという感じですが、何故主役を片山にしたんですか?
緑川: なんで?なんでだ?なんでだろう??
片山: すごく歯切れの悪い電話もらったのよ。
緑川: えー覚えてねー。
片山: 「片山さー、次の公演主役やる気ある?」って言われて、
「え…、やる気はありますけど……、なんでですか?」
「前回のように客演さん多いから、僕のイメージは片山じゃないんだけど、客演さんが多い中でうまくまとめられるひとが主役がいいから…」
緑川: あー思い出した。自分の周りにいっぱいいる脇役の投げてくる綱を、パッてキャッチできる人じゃないと、キャラクターのイメージが近くても主人公はできないなって思った。
片山: 主役はやっぱ違う。それはやってみて、こうも違うんだって思った。居方に気を遣ってる。
緑川: でね。今回は片山のイメージから、比較的格好良い主人公を描いていかなきゃいけないんだろうなって思ったんだけど、結局ね、そういう人物の中にもある格好悪いところがあぶり出されてきて、ってことになりそう。
――二ヶ月後はどうなっていたいですか?何か目標ありますか?
緑川: 二ヶ月後はゲネだなぁ。
片山: あ、テンパってるんじゃん?
緑川: うーん、元気でいたいよね。笑。想像できないけど。
またパリの話になるけど、パリに発つ日は、十日後の自分が生きている姿が想像できなかったのね。それに近いかな。
だから、それくらいこの後に控えてる二ヶ月が、今まで自分が経験したことのない二ヶ月になるんだろうって思う。
だから、目標は元気でいたい。
片山: 余裕を持っていたいかな。周りを見ていられれば。
緑川: 今回、それすごく言うね。
片山: いや、本当実感した。周りの力でこんなに変わるんだって、すごーく。今回は、無欲です。無欲でひたむきを目指す。
緑川: いいね。
片山: 主役は必然的に視線が集中するじゃん。それなのに、自分のエゴとか欲望のままにやってたら、観たくなくなると思う。
お客さんの数だけレグルスがいる感じにしたいかな。
――最後に『レグルスのガラスの翼』の見所を教えてください。
緑川: 見所は、お芝居の一番最後の主人公レグルスの顔および背中。多分何を語るわけではないんだと思う。
そこから、お客さんが何を感じてくれるか、かな。
片山: それ意識して、精進します。

(インタビュー:坂井清香)